岳精流日本吟院総本部

箱根路の山中新田を下りて作有り

o白白…真っ白。
o塵眸…旅にまみれた眸。
o豆海…伊豆の海。
o蒼々…空や海の色が青い。   
o百憂…すべての憂い。
o三洲…三島。
 

詩意

 霊峰富士は真っ白の雪を抱いて、眺める人の眼を洗い、伊豆の海は青々として眺る人の愁いを払ってしまう。
 杖を留めて眺めるまさに天下の景だ。
我々はここで大いに吟じて勇躍三島に向かった。
 

解説

 歩いて見る景色は格別のようである。
富士が現れると最高の富士であった。

 山中城趾と言うのがあって、その下方あたりだと思われる。
前方に伊豆の海が開け、右手やや後方に富士が大きくあでやかに姿を見せた。
 誰もが休憩、休憩の声。
ここは一番吟じなくてはおれない風景である。
「富士山・石川丈山」
 を声高らかに合吟。

「仙客来たり遊ぶ雲外の巓   神竜棲み老ゆ洞中の淵 
 雪は紈素の如く煙は柄の如し 白扇倒に懸かる東海の天」

源実朝は詠っている。
「箱根路をわが越えくれば伊豆の海や 
             沖の小島に波の寄る見ゆ」

 作者の心象は解らない。
しかし眺めるだけで詩情が滲み出るようだった。