岳精流日本吟院総本部

1:発っせんと欲して作有り

出発

  • 機を変ずる:機会を変更する。
  • 宿願:以前から持っていた願い
  • 臺上:テラス(作者の書斎の横にある)

詩意

今朝の空は雲が蔽って、ほんのわずかに明るい程度だ。天候が危ぶまれるが私にはかねてからの計画があってこれは変更しない。

テラスから西を眺めるとそこは東海道だ。私はねんごろに旅衣を纏った。

解説

歩いてみたい。その思いは何時の頃からだったのだろうか、漠然と胸底に起こっていた。多分名古屋にいた頃からか、もっと以前からかもしれない。

三ヶ月ほど休暇をとって・・・。素晴らしいな・・・。でもこれは出来ない。
ならば、尺取り虫宜しく、行けるところまで歩いて、帰って、又その次を歩く。
これなら出来る。わが岳精会青年部で一杯やっていると、勢いでこの思いがつい言葉となって出た。

「明年、箱根を越えて名古屋まで歩く」

それ以来、一年の間、岳精会のあらゆる機会に宣言した。
実行せざるを得ない、後戻りできない状況に自分を置いたのだ。
エンジンを暖めて発射するまで随分時間がかかったようだ。

年を明けて、いよいよ決行の時が来た。
第一日目、平成12年1月15日。目的地は鎌倉円覚寺。30キロ弱。同行は岳精会青年部長家吉龍真、尺八奏者の奥本林山氏の二名。
4時過ぎには目が覚める。旅衣の背に文字を入れたくなった。
「天真に任す」
良寛の句からとったものだ。左襟に
「岳精流日本吟院 横山精真」

未明の空は雲が厚く蔽っており一向に明るくならない。
庭のお地蔵山におまいりして出発した。朝7時ちょうど。