岳精流日本吟院総本部

五十八 富海にて初めて九州を見る

o富海…山口県防府市富海、海水浴場の浜がある。
 

o自得…自分から得意になる。 

o飄零…おちぶれる。


o愚魯…のろま。 

o道八千…長い行程の意。実際は約一三〇〇キロ。

詩意

遂に太陽の照り輝く中に九州が見えた。そこは富海といって白砂が波打ち際までつづきそのまま海が天まで連なっている浜辺だった。

あわれな姿をしている私は瞳を凝らして遂に来たぞと心を躍らせた。この愚か者は家を離れること八千里の道を歩いてきたのだ!

解説

八月十五日、四時十五分に出発。小郡に向かう。疲れが残っているのかどこもかしこもバリバリで動きはぎこちない。屈伸運動をして軽く体を動かし、汗に湿った旅衣を身につけてロビーに集合する。そこで簡単な挨拶を交わす。 これで丁度十五分かかる。普段の出発のあり方である。

途中でまた携帯を通じて国澤氏が来るまで追いかけてくれた。案内してもらい、何かと気遣っていただいた。荷物を車に運んでもらうと随分楽である。

「ちょっと海を見ましょう」

二号線の一本道であったが、国澤氏の案内で脇道に入った。海水浴場のきれいな砂浜がひろがっていた。だが旧盆のその日、誰も人は居なかった。午前八時四十分と記録してあるからまだ早かったのかもしれない。

砂浜へ出てみた。日差しは強く、砂は焼けている。海は真っ青である。その時、国澤氏が言った。

「向こうにうっすらと陸が見えるでしょう。あれは九州です。実際は手前が姫島でその向こうが大分竹田津と云うところです。釣りには、あの近くまで船をやるんです。」

確かに、よく晴れた海の向こうに霞んだようにして陸が見え取れた。九州だ!ついに来たのだ。