岳精流日本吟院総本部

三十 木曽川を渡る

o剪剪…風のうすらさむいさま。
o蘇川…木曽川。
o大橋…濃尾大橋。
o愴然…激しく心の痛むさま。
o陰雲…雨雲。(前日は雨だった。)
o西嶺…伊吹山系。
o渺…水がひろびろとして果てないさま。 
o滔天…大水が天までみなぎる。
 

詩意

 秋風が薄ら寒く、木曽川に吹き渡っている。私は一人濃尾大橋を渡っているのだが、どうしてこうも激しく心がいたむのか。
 太陽は雨雲を払って日は差しているのに西の峰々は依然として暗く、昨日の雨で濁った水が果てしなく流れて天の向こうまでみなぎっているのを見るばかりだ。
 

解説

 平成十二年十一月二十一日、一宮シティホテルを朝七時に発つ。
前夜の雨は上がったが薄曇りの肌寒い日だった。
二日間で八十数キロを歩き彦根へ向かう。
先ずは関ヶ原だ。

 尾西市を西方へ一直線に横切ることになるが、随分長い。
二時間を過ぎて木曽川にたどり着く。
 濃尾大橋が架かっているが、補強の工事中だった。
足下(あしもと)の真下(ました)が見える仮の橋を歩き進め、中程まで来て立ち止まり眺める。

 川は濁流を含んで吾が足下を滔々と流れ来る。
天と地、そして足下をすくう大いなる水の流れ。
その視野の中で私はまったく心細いちっちゃな存在になってしまった。

 西に向かう。
次に長良川を渡ったところで一宮の高橋龍宝氏から携帯に電話がかかった。
おはぎを作ったので届けるとのこと。
 お孫さんの手を引いて高橋さんが車から現れた時は、内心ホッとした気持ちだった。
そのお孫さんをしっかり抱いた時のぬくもりを覚えている。