岳精流日本吟院総本部

五十六 良心に触れる

o良心…人間固有のよい心。 

o一期一会…(茶の湯で)すべての客を、一生に一度しか出会いの無いものとして、悔いの無いようにもてなせ、という教え。 

o芬…こうばしい。


o淳厚…真心があって手厚い。 

o小照…写真。

詩意

生涯にただ一度かと思われる出会いに、旅心はかんばしい芳香を放つ。真心もって手厚くもてなされる人のことをどう表現したらいいかは判らない。この先再会することがあるのだろうかないのだろうか、いや、もうないだろう。そんなことを思って、せめて写真にでも一緒に納まって慇懃に分かれることにする。

解説

平成十三年八月十三日、錦帯橋より山口県を南西に内陸部の熊毛という片田舎まで歩く。

人生にはそれっきりの、然りも印象に残る出会いがある。私は道中腹具合がおかしくなり、仕方なく見知らぬ家のベルを鳴らしてお手洗いを借りた。家のご婦人は大変親切であったので本当に助かった。

我々はお茶を頂き、早々に御礼を言って退出しようとしたが、あつかましさついでに、玄関先で吟を聞いて戴くことにした。

「自然と人生(吾家の富) 徳富蘆花」

この親切にして頂いているご婦人とはもう一生会うこともないのだなと思うと、自分としては簡単に絶句で終わらせたくなかったのだろう。だが吟は出来が良くない、押しつけもいいとこだ。

例によって、坂井さんと二人、旅衣にサインをしてもらった。どうぞ、ごきげんよう!