岳精流日本吟院総本部

二十八 木曽川に到る

o桑津…桑名。頼山陽の詩「舟大垣を発して桑名に赴く」に因む。
o東坡…木曽川の東の岸(一宮側)。山陽が木曽川を蘇水と詠ったのに因む。東坡は蘇軾の号。
o便ち…すぐに。
o詩……山陽の詩(前述)。
o金觴…めでたいときの杯。
o長旅を祝す…そもそもこの旅の目的地は、この木曽川辺であった。
 

詩意

 頼山陽が下って行った桑名は何れの処か?
川の流れは馳せるように流れている。今木曽川の東側に到達し、すぐさま山陽の詩を吟じた。
 そして缶ビールを高々と挙げて乾杯し長旅の成就を祝ったが、夏の雲は遠く何処までも青空に広がっていた。
 

解説

「ついたぞ!」
 五節、ついに延べ十九日の旅の目的地に辿り着くことが出来た。
 炎天下、木曽河辺で岳精会の吟友二十名余が拍手で迎えて呉れた。
嬉しかった。
 家の者を心配させてまでの強行軍が無事に済んだのだ。

 今朝は一宮のホテルを出ると美濃岳精会に立ち寄ってわずかの道を歩いた。
ここまでは道のべに岳精会が活発に活動しているから最後までお世話になった。
 
 この十三年前、丸四年間名古屋に居た時、ここは仕事のテリトリーでもあった。
吟友の在住する一宮には頻繁に伺ったし、ついでにこの河畔にもよく足を延ばしている。

 木曽川の川辺は桜の名所である。
又、冬の浅瀬の流れは水がキラキラとして、水鳥の群と相俟って清冽な美しさが印象に残っている。
名古屋迄の旅の最後はここに立ちたかった。

缶ビールを挙げ「山陽」を吟じた。
「満願」と、人は祝福したが私はひそかに否定した。
 西の方に伊吹山が雲を帯びて見える。
東海道は京都が終着点だ。
続けて歩くとしたら大垣でなく、まっすぐ西へ、関ヶ原だと思った。