岳精流日本吟院総本部

陽二月曇天の江ノ島

江の島を望む
坂井氏と

縹渺の間:遠方のぼんやりとしてはっきりしない状態。
雲裏:雲の中
山を看ず:富士山が看られなかった
島陰:江ノ島のこと

詩意

ずっと遠くまで砂浜がぼうっと見えて続く。空と海は雲に覆われて今日は富士山が見えない。
私は江ノ島に向き合っているが人影はなく、ただ鳶が飛び交っているのみで、浜辺はますますものしずかである。

解説

第二節、二月十九日鎌倉より平塚(泊)、二十日小田原へ。
一日目の同行は家吉龍真、酒井學風氏の二名。
円覚寺に集合して歩き始める。
途中、鎌倉の海岸に出るまで道に迷うが、鎌倉ならではの風情を道に感じた。
やっとの事で海に出る。
そして西へ歩く。

江ノ島はあいにく鉛色の空模様。
富士も見えない。
風がなく、波が極めて静かで寂しげである。
でも歩き疲れた身には気持ちが和む。

実は、私はこの一ヶ月松葉杖をついていた。
左足に変調を来し、地に足をつけなくなった為である。
この故障は若い頃の頸椎損傷のため、それまでにもふとしたことで発症するのであった。
歩く二日前にやっと靴を履けるようになった。
案じられたが歩くことにした。
しかし不安は現実になる。
初めは靴の中が多少ぎこちない程度だったが、平塚に着く頃には左足をかばっていた右足に疲労がたまり、たまらなく痛くなった。