岳精流日本吟院総本部

五十一の3

o凛乎…きりっとしたさま。

o悲辛…つらい悲しみ

o確乎…しっかりとした様。頑丈なもの。

o紲…きずな。

o家書…家からの手紙。

o豊溢…あふれるように豊か。

o潤沢…うるおう。

o慰誨…なぐさめおしえる。

o騒屑…風のそよぐさま。

o万金…「家書万金に抵る」より、家からの大切な手紙のこと。

o日…太陽。

o相望…互いに見え合う。

o寂寥…さびしさ。

o飢渇…くうふく。

o一信…一つの手紙。

詩意

 八尾家は広島にお住まいでした。 そして、小学生である洋二さん・咲子さん兄妹は学童疎開のため、ご両親のもとを離れたのでした 凛として美しいお母様は、夜ひそかに涙を流し  子供の疎開のため心を込めて荷を作り、つらい悲しみを忍んだのでした。
   この家族は、普段から強い絆で結ばれていました。
                       
   疎開先の二人にはご両親やお兄様からの手紙が頻繁に届き、その内容は情愛が溢れるばかりでした。
また、戦争中だからこそ、却ってうるおいのある心を失わな いようにと、願っていました。
ご両親のなぐさめおしえる言葉は、まるで風のそよぐように優しさにあふれていました。  
  兄妹は万金に値するその手紙を、額を寄せ合って読みましたが、それは野辺の若草が太陽を仰ぐかのようでありましたし、手紙を読み進めては、自らを励まし、又、近くにご両親を思うことができ、 少しの間、さびしさと空腹を忘れたのでした。 そんな時、お父様からの一通の手紙の中に撫子の花のことを問いかけていました。 (その手紙は何時になく長く)子を愛しみ、大切なことを言い尽くし、書き尽くされておりました。

解説