o社友…大阪岳精会の吟友。
o鴨水…鴨川。
o彩霞…朝焼け夕焼けの美しい霞み。
o多情…心の感受性が多いこと。
o京洛…ここでは京都のこと。
吟友は鴨川の東、三条の大橋のたもとで私を迎えてくれた。千里もの長旅もいよいよ終わりだ。
欄干によって見ると、おりしも京都の町がうっすらと夕霞みに掩われ、セピア色に包まれていた。私はその中で自ずと感慨がこみ上げるのだった。
ついに京都へ着いた。
自分の頼りない足で、延べ二十三日間で横浜の家から東海道を歩き尽くしたことになる。
「三井の晩鐘瀬田の夕べ 征人容易に郷愁を惹く・近江八景」
彦根より何回吟じたことだろう。三井寺に寄り、鐘を突いて歌い終える。
「京都まで五キロ」の道路標識、
一気に京都へ向かった。
うれしさが子供心のようにこみ上げ正に飛ぶが如く歩いた。
しかし、いくら飛んでも「あと五キロ」とある。
道路標識には随分励まされたが、こんな風に「なんだ?!」と思わされることも度々だった。
それでもトンネルをくぐりやがて下り坂になって間もなくすると、京都三条大橋に到着した。
三条大橋の雑踏の中で大阪岳精会の吟友が迎えてくれた。
皆さんの歓迎の中で、暮れなずむ京都の空が印象的だった。
到達の喜びにひたると共に、
「よし、今度は九州までだな」
と次の目標がやっと現実になった事を覚えている。
夜は大阪岳精会による祝賀の宴を受け、ひとしきり談笑した。