岳精流日本吟院総本部

三十五 京都三条大橋に到る

o社友…大阪岳精会の吟友。

o鴨水…鴨川。

o彩霞…朝焼け夕焼けの美しい霞み。

o多情…心の感受性が多いこと。

o京洛…ここでは京都のこと。

詩意

吟友は鴨川の東、三条の大橋のたもとで私を迎えてくれた。千里もの長旅もいよいよ終わりだ。
 欄干によって見ると、おりしも京都の町がうっすらと夕霞みに掩われ、セピア色に包まれていた。私はその中で自ずと感慨がこみ上げるのだった。

解説

ついに京都へ着いた。
自分の頼りない足で、延べ二十三日間で横浜の家から東海道を歩き尽くしたことになる。

「三井の晩鐘瀬田の夕べ 征人容易に郷愁を惹く・近江八景」
 彦根より何回吟じたことだろう。三井寺に寄り、鐘を突いて歌い終える。

「京都まで五キロ」の道路標識、
 一気に京都へ向かった。
うれしさが子供心のようにこみ上げ正に飛ぶが如く歩いた。 
 しかし、いくら飛んでも「あと五キロ」とある。
道路標識には随分励まされたが、こんな風に「なんだ?!」と思わされることも度々だった。
 それでもトンネルをくぐりやがて下り坂になって間もなくすると、京都三条大橋に到着した。

 三条大橋の雑踏の中で大阪岳精会の吟友が迎えてくれた。
 皆さんの歓迎の中で、暮れなずむ京都の空が印象的だった。
 到達の喜びにひたると共に、
「よし、今度は九州までだな」
 と次の目標がやっと現実になった事を覚えている。

 夜は大阪岳精会による祝賀の宴を受け、ひとしきり談笑した。